外国人 介護福祉士|受入れのための制度と注意点

人材不足に悩む事業者の皆さまにとって、外国人の介護福祉士を採用することは非常に効果的です。この記事では外国人介護福祉士を受入れるための制度と注意点をご紹介します。

外国人 介護福祉士|受入れのための制度と注意点

2005年以降、日本は世界高齢化ランキングで1位をとり続けています。

今後さらに少子高齢化に拍車がかかるなか、医療と並び不安視されている業界が介護業界です。特に介護事業者の皆さまにおいては、介護福祉士の確保に悩まれている方も多いのではないでしょうか?

即戦力として、または将来の管理職候補として、国家資格取得者の採用は重要だといえます。そして国内人材が減少するなか、注目を集めているのが外国人人材です。
また、外国人材の中でも介護福祉士であれば勤務年数に期限はなく、また勤務開始後すぐに配置基準への算入が可能です。

本記事では外国人介護福祉士を受入れるための制度と注意点をご紹介します。
人材不足にお困りの方、またすでに外国人介護福祉士の採用を検討している方にとって有意義な内容となっています。ぜひご一読ください。

目次

  1. 外国人介護福祉士の受入れについて
  2. 在留資格「介護」の制度と注意点
    1. 在留資格「介護」とは?
    2. 在留資格「介護」の注意点
  3. 将来的に介護福祉士資格取得が見込める制度
    1. EPA制度
    2. 技能実習・特定技能制度
  4. 外国人の試験合格状況について
  5. まとめ

1. 外国人介護福祉士の受入れについて

人材不足に悩む事業者の皆さまにとって、外国人の介護福祉士を採用することは非常に効果的です。日本人以外に採用対象者を広げるため、採用できるチャンスが増えることはもちろんですが、その他に次の2つのメリットがあります。

永続的に勤務が可能

国家資格「介護福祉士」を取得していない外国人介護士は、国内滞在中に国家試験に合格できなければ、就労期間は10年が最長です。一方、国家資格を取得している外国人介護福祉士は労働可能な期間に限りがありません
資格未取得の外国人介護士を採用したのち、試験不合格によって人員が減ってしまうとなれば一苦労です。資格をすでに取得している外国人介護士を採用することで、および今雇用している外国人介護士に国家資格「介護福祉士」を取得してもらうことで、こうした問題やリスクを回避できます。

配置基準に即算入が可能

介護技能実習生を採用する場合、6ヶ月間、人員配置基準に含めることができません。
一方、国家資格「介護福祉士」を取得している場合、勤務開始直後から介護報酬上の配置基準に算入できます。
例外として2019年4月から始まった特定技能制度では、資格未取得者でも採用直後から配置基準に算入が可能です。ただし特定技能制度の場合、勤務開始から6ヶ月間は他の日本人とチームで行動しケアが必要です。
このため、コストなしで配置基準に即算入するためには、介護福祉士を採用する方法しかありません。

すでに国家試験「介護福祉士」に合格している外国人を受入れるためには、在留資格「介護」をもつ外国人を採用する、または今雇用している外国人介護士に国家資格「介護福祉士」を取得してもらう必要があります。
次からは、外国人介護福祉士を受入れるための制度について、注意点とあわせて具体的に紹介します。

2. 在留資格「介護」の制度と注意点

2-1. 在留資格「介護」とは?

在留資格「介護」は2017年9月に施行された制度です。介護福祉士試験に合格することが前提となっており、外国人介護人材の在留資格において、最もハードルが高いものになっています。そのため、在留資格の更新回数に制限がないほか、外国人の家族も帯同が可能になるメリットがあります。

在留資格「介護」を取得するための方法は、「養成施設ルート」と「実務経験ルート」の2通りがあります。

養成施設ルート

「養成施設ルート」とは、外国人留学生が日本の介護福祉士養成校を卒業し、国家試験に合格することで、在留資格「留学」から在留資格「介護」に移行する方法です。具体的な流れは次の通りです。

  • 外国人留学生として入国
  • 介護福祉士養成校にて修学(2年以上)
  • 介護福祉士試験に合格※ただし経過措置として2026年度卒業までは、試験不合格の場合でも5年間実務に従事することで介護福祉士の資格取得が可能です。
  • 介護事業所に就職

在留資格「介護」のポイントは、介護福祉士資格を有する以外にも、高い日本語能力が見込める点にあります。一般的な養成校の入学要件は、日本語能力試験N2以上の合格であるためです。

資格を保有するだけでなく高い日本語能力も兼ねているため、まさに即戦力となり得るでしょう。

実務経験ルート

「実務経験ルート」では、従業期間3年(1,095日)以上かつ従事日時540日以上の実務経験と、実務者研修の修了が必須とされています。

具体的には、3-2. 技能実習・特定技能制度で説明いたします。

2-2. 在留資格「介護」の注意点

一方で、在留資格「介護」制度を活用した外国人介護福祉士の受入れについて、注意すべき点もあります。

在留資格「介護」の制度においては、外国人留学生と事業者の皆さまをつなぐ受入れ調整機関が存在しません。このため、採用活動を事業者自ら行うことが必要です。

外国人留学生の採用活動といっても、何から手をつけるべきか迷われると思います。
まずは外国人採用を積極的に検討していることを周辺の養成校に連絡することから始めましょう。

同時に、外国人を積極採用していることが伝わる求人募集広告を出すこともおすすめです。留学生のなかには事業所へ直接応募する方もいるため、求人広告を見て留学生から連絡をしてくる可能性もあります。

介護福祉士養成校に入学する外国人留学生は年々増加しており、令和2年度には2,395人となっています。また、国も奨学金制度を整備するなど受入れ推進を図っています。
これを機会に、ぜひ在留資格「介護」取得者の受入れを検討してみてください。

3. 将来的に介護福祉士資格取得が見込める制度

ここまで外国人介護福祉士を受入れるための制度と注意点について紹介してきました。しかし介護福祉士の人数も限られており、資格保有者を採用することは簡単ではありません。かけたコストが無駄になってしまうことも考えられます。

そのため次からは、国家資格を将来的に取得する可能性がある外国人の受入れについて解説していきます。どの制度も即座に介護福祉士になれるものではありませんが、国の制度であるため即戦力としての技能をもった方の採用につながります。
ぜひ参考ください。

3-1. EPA制度

EPAとは「経済連携協定」の略で、国家間経済活動の連携を強化する目的があります。
このため、一定以上の技能をもつ外国人が日本語研修を受けて入国します。対象となる外国人は母国にて看護系の学校をすでに卒業している、または母国政府によって介護士認定されている方です。
入国から4年目に介護福祉士試験を受験し、合格すれば就労期間の制限がなくなります。
不合格の際は帰国しなくてはなりませんが、本制度における外国人は介護福祉士資格の取得を目的として来日しています。
そのため、試験合格の可能性は高いと考えられます。

EPAの注意点として、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国からの受入れのみという点があります。毎年の受入れ上限が各国300名ずつと限られており、全ての事業者が採用できるとは限らない点に留意してください。

また、勤務開始から6ヶ月間は配置基準に含むことができない点も注意が必要です(日本語能力試験N2取得者は除きます)。

採用にあたっては、公益社団法人国際厚生事業団が唯一の受入れ調整機関として機能しています。在留資格「介護」と異なり、外国人と事業者のマッチングについて支援を相談できます。

試験について

筆記試験と実技試験があります。
筆記試験に関しては、日本語のハンディを考慮して、試験時間が1.5倍に延長されます。また、漢字にはふりがなが付記されています。
実技試験は、「実務者研修」や「介護技術講習会」を受講することによって免除できます。とは言え、時間やお金の面だけでなく、研修が受けられる施設までの移動が難しかったりしますので、受講するのはごく一部で、実技試験を受ける方が多いようです。

3-2. 技能実習・特定技能制度

次に紹介する制度は技能実習制度と特定技能制度です。どちらも介護福祉士資格を未取得の状態で国内勤務ができる制度です。特定技能「介護」外国人は、日本滞在中に介護福祉士試験に合格しない場合、最長5年間の就労となります。介護技能実習生は、日本滞在中に介護福祉士試験に合格しない場合、通常3年、最長で5年の実習ですが、3年経過後に特定技能に資格変更が可能で、追加して5年の就労が可能です。

技能実習制度であれば、入国から3年後と5年後に実務者研修の修了後であれば介護福祉士試験の受験資格が得られます。合格した場合、在留資格「介護」を取得でき、永続的に勤務が可能となります。

特定技能制度も同様に、国内での就労が3年以上であれば実務者研修の修了後に国家試験の受験資格が得られます。合格した場合、同じく在留資格「介護」に移行することが可能です。

これらのように、国内での実務経験を経たうえで在留資格「介護」を取得する方法が、在留資格「介護」取得の2つ目の方法である「実務経験ルート」です。

事業者の皆さまにもし時間的余裕があれば、将来的に介護福祉士を目指す人材として、技能実習生や特定技能外国人の受入れから始めることがおすすめです。

特に特定技能制度は2019年に開始された最新の制度であり、事業者の皆さまと特定技能外国人の支援制度が整っています。外国人受入れ時から就労中の生活まで支援できる、登録支援機関が国内に多数存在しているためです。

試験について

筆記試験のみです。実技試験は、免除になります。
EPA介護福祉士候補者と違い、試験時間は、日本人と同じです。
希望すれば、漢字に、ふりがなが付記されている問題用紙が配布されます。

4.外国人の試験合格状況について

最新(令和2年度)の情報によると、EPA介護福祉士候補者の受験者数は対前年度比195人増の953人でした。
合格者数は440人です。合格率は46.2%となっています。
日本人も含めた全体の合格率は71.0%です。

今回の結果で、注目すべきがベトナム人の合格率の高さです。164人の合格者を出していて、合格率は92.1%となっています。インドネシアは146人で、36.5%、フィリピンは130人で34.7%でした。
なぜ、介護に関するEPA制度の歴史が一番浅い、ベトナムが高い合格率を誇ったのか、その点に注目すれば試験に合格するヒントがあるのではないかと思い探ってみました。

ベトナムは、訪日前の日本語研修が12か月と、他の2国の2倍です。また、日本語能力試験N3取得が要件となっており、他の2国のN5とは全く違います。
N3は日常会話がある程度理解でき、漢字も600字前後わかる必要があります。
N5は、できるだけわかりやすい日本語を使えば、ある程度理解できるレベルで、一般の人の話を聞き取ったりするのは難しいです。漢字は100字程度です。

介護福祉士試験は、筆記試験と技能試験ですが、技能試験に関しては、EPAで受験する場合だけです。3年間に身に着いたスキルで十分対応可能だと思います。
問題は、筆記試験です。筆記は、漢字、語彙力、読解力がものを言います。
漢字は読み方も大切ですが、意味がわかることが試験の際は重要なのです。ですから、ふりがなが付記されているからと言って、一般の日本人もわからないような専門用語を除いて、特段有利になるとは思えません。
職場で、毎日の聞き取りや会話を通して、日本語はだんだん上達するでしょう。

しかし、漢字や語彙、読解力は、トレーニングでしか身に付きません。
今、非漢字圏の学生のための英語やベトナム語、インドネシア語等の訳がついた漢字や語彙のテキストがあります。練習帳もセットになっていて、無理なく自習できます。
時折、職員が誤った書き方をしていないかチェックしてあげれば、より正しく学習できます。
問題を読み取らなければならない筆記試験には、漢字力をつけさせスムーズに文章を読めるようになることが大切です。
その上で、参考書や過去問集を使い、知識を蓄え、問題を解く力を向上させるのです。

介護福祉士試験は、他の国家士試験と比べると、実務経験者に有利に作られていると言われています。安全で、信頼関係を築けるような介護をするための基本的な知識を問う問題がほとんどです。漢字力が身に付き、読むことがスムーズになれば、決して難解な試験ではありません。

5. まとめ

本記事では外国人介護福祉士の受入れ制度について、基本事項と注意点をご紹介しました。ポイントは次のとおりです。

  • 外国人介護福祉士の受入れについては、調整機関が存在しないため事業者自ら採用活動を行うことが必要。
  • 外国人介護福祉士を受入れるためには、まず周辺の介護福祉士養成校に問い合わせすることから始める。
  • 数年間就労したのちに介護福祉士になる人材の受入れであれば、「EPA」「技能実習」「特定技能」といった制度の活用がおすすめ。

介護福祉士の採用が急ぎ必要であれば、在留資格「介護」を取得している外国人留学生の採用に的を絞りましょう。逆に時間に余裕があるのであれば、他の「EPA」「技能実習」「特定技能」についても検討してみてはいかがでしょうか。

皆さまの事業発展に少しでも寄与できれば幸いです。
最後までご覧いただき誠にありがとうございました。

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