特定技能「飲食料品製造業」|外国人をで雇用するための要件

特定技能として就労するためには、18歳以上であり、技能試験と日本語の試験、両方に合格する必要があります。また酒類、塩、ペットフード製造業などは特定技能の受け入れが禁止されています。この記事では特定技能「飲食料品製造」で外国人を雇用するための方法について解説します。

特定技能「飲食料品製造業」|外国人をで雇用するための要件

飲食料品製造とは、工場や調理場などで、原材料から食品を加工、生産、販売する仕事です。
お惣菜やお菓子はもちろん、調味料や缶詰など、私たちの「食べる」ことに関わるあらゆるモノが作られているのです。
国民の健康にも大きな影響を及ぼす食品製造業ですが、実は、深刻な人手不足に陥っています。
そこで注目されているのが、「特定技能」による外国人労働力の活用です。
今回は、飲食料品製造分野における特定技能と、その雇用方法についてご紹介します。

目次

  1. 食品製造業界で存在感を増す「特定技能」
    1. 特定技能が対象になった背景
    2. 対象となる仕事は「飲食料品製造全般」
    3. ポイントはメインの事業が「食品製造」であるか
    4. 「酒類」や「塩」などの製造は対象外
  2. 飲食料品製造分野における特定技能ビザの取得要件
    1. 技能試験の合格
    2. 日本語試験の合格
  3. 受入れ機関に求められる条件
    1. 適切な雇用契約
    2. 適切な支援
    3. 協議会への加入
  4. まとめ

食品製造業界で存在感を増す「特定技能」

特定技能制度とは、一定水準の技術と日本語能力を持った外国人材を受け入れる制度です。
2019年、国が労働力不足解消のために打ち出し、特に人材が不足する12分野14職種において、受入れが認められることとなりました。
飲食料品製造業もその一つで、積極的な制度の活用に取り組んでいます。

特定技能が対象になった背景

飲食料品製造業が特定技能の対象となった背景には、二つのポイントがあります。
一つは「人材不足」、もう一つは「自動化の難しさ」です。

◆人材不足

日本はご存知の通り、少子高齢化社会を迎えています。
このような局面の中、製造業の94%の企業が人手不足を感じ、その中でも32%は、「ビジネスに影響が出ている」と認識しているのです
飲食料品製造業界においても、働き手が少ないため、一人ひとりの仕事の負担が増え、かつ給与の水準が低いという課題もあります。
「大変な仕事だ」というマイナスのイメージが先行してしまい、他業種へ人材が流出し、更に雇用が難しくなるという状況に陥っているのです。

◆自動化の難しさ

食品製造業界はこれまで、女性人材の活用やシルバー世代の雇用など、時代の流れに乗り、人手不足を乗り越えてきました。
テクノロジーが日々進化する現代において、機械による自動化の波にも乗っています。
しかし、食品の特性上、完全に自動化することは難しいとされています。
高い衛生観念や安全性が求められる点、ロボットには柔らかい食材が扱いづらい点、目視で確認しなければいけない工程がある点など、抱える課題は少なくないのです。

対象となる仕事は「飲食料品製造全般」

特定技能の対象となる仕事は、次の業務を行う事業所での、飲食料品の製造や加工、安全衛生です。

  • 食料品製造業
  • 清涼飲料製造業
  • 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
  • 製氷業
  • 菓子小売業(製造小売
  • パン小売業(製造小売
  • 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業

製造と小売を一体的に行っている菓子・パン製造小売、豆腐・かまぼこ等加工品食品小売業も対象となります。
街中にあるパン屋さんなども、特定技能制度を活用できるのです。
また、飲食料品製造の関連業務として、調達や受入れ、納品、清掃などにも従事させることができます。

ポイントはメインの事業が「食品製造」であるか

この分野の対象となるかは、「製造」を主とする事業であるかがポイントとなります。
例えばお弁当屋さんの場合、お弁当やお惣菜を製造し、小売業者に卸売りするのであれば、「飲食料品製造分野」の特定技能の対象となります。
これが、持ち帰りの惣菜やテイクアウト弁当として、個人顧客の注文に応じて調理、販売するのであれば、「外食分野」の対象となるのです。
また、別会社で作られたお弁当を仕入れて、店舗で販売する場合は、小売業に該当するため、特定技能制度の対象とはなりません。

「酒類」や「塩」などの製造は対象外

幅広い分野で特定技能の受入れが認められる飲食料品製造ですが、酒類製造業、飲食料品小売業、飲食料品卸売業、塩製造業、医療品製造業、香料製造業、ペットフードの製造は、制度の対象外となります。

飲食料品製造分野における特定技能ビザの取得要件

特定技能は、1号と2号に分類されますが、飲食料品製造分野で受け入れることができるのは特定技能1号のみです。
また、特定技能として就労するためには、18歳以上であり、技能試験と日本語の試験、両方に合格する必要があります。

技能試験の合格

こちらは、飲食料品製造に関する技術水準と、業務に必要な日本語の水準を確認するための試験です。
「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」(主催:一般社団法人外食産業技能評価機構)を受験します。
試験は国内外で実施され、食品製造の衛生管理に関する知識が問われます。
具体的には、食中毒や異物混入、材料の選別や保管、施設内外の衛生管理についての、基本的な知識や技能などについて。
併せて、外食業で必要とされる基本的な日本語力についても確認されます。

日本語試験の合格

日本語能力の水準は、日常会話ができ、支障なく日本での生活が送れるレベルが求められます。
日本語試験も国内外で実施され、「日本語能力試験(JLPT)」(主催:独立行政法人国際交流基金/日本国際教育支援協会)、もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト(JTF-Basic)」(主催:独立行政法人国際交流基金)を受験します。
また、これらの試験とは別に、食品製造関係の技能実習3年間を良好に修了することで、飲食料品製造分野で特定技能活動が可能です。
仮に他職種の技能実習であっても、技能実習2号を修了していれば、特定技能における日本語試験は免除されます。

このように特定技能は、試験をクリアする、もしくは技能実習3年を修了することで、知識と日本語力が一定水準以上であることを確認できます。
外国人労働者の受け入れ経験がない企業にとっては、彼らのスキルやコミュニケーション力に対する不安を、和らげることができますね。

受入れ機関に求められる条件

受入れ企業(所属期間)は、自社で海外の送り出し機関と直接連絡を取るか、国内にある人材紹介会社から紹介を受ける形で、特定技能労働者を採用します。
特定技能を受け入れる企業には、次のような条件が求められます。

適切な雇用契約

採用決定後は、特定技能労働者との間で、適切な雇用契約を結ぶことが大前提です。 その中でも特に注意したいのが、次の二点です。

◆直接契約

外食分野での特定技能受け入れは、直接契約のみ可能です。
派遣契約や請負契約など、間接的な方法で雇用することはできません。

◆日本人と同等以上の待遇

報酬を含めた、福利厚生や待遇面では、同じ仕事をする日本人と同等以上にしなければなりません。
外国人であることを理由とした、差別的取り扱いは禁止されています。
参考:「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」の第1条
過去に日本では、外国人を低賃金で雇用することが社会問題となりました。
特定技能の受入れを検討する企業は、「安く雇える労働力」という認識でいると、トラブルにつながる恐れがあります。
「グローバル人材」として、日本人労働者と同じだという認識を持つ必要があるのです。

適切な支援

特定技能で労働者を受け入れるためには、彼らへの支援が法律で義務付けられています。 入国前に契約や活動の内容をガイダンスすることから始まり、出入国時の送迎、生活支援、知識や情報の提供など、その内容は多岐にわたります。
このような支援を、彼らが十分に理解できる言語で行う必要があるのです。
企業自身がこの支援体制を整えるか、もしくは「登録支援機関」に委託する必要があります。

協議会への加入

受入れ企業は、特定技能の受入れから4ヶ月以内に、「食品産業特定技能協議会」の構成員にならなければなりません。
これは、企業同士の情報共有や、不正予防、また、特定技能の受入れ状況を把握するといった目的で、農林水産省が運営する組織です。
特定技能制度の懸念点として、特定技能労働者が大都市圏に過度に集中することが挙げられます。
協議会は、全国的な人材状況を把握し、制度関係機関や外食業界団体などと連携することで、地方の人手不足に対応するといった役割もあります。

まとめ

飲食料品製造業界は、人材なくしては成り立たない分野です。
日本は、今後も更なる少子高齢化が進むと予想され、多くの企業で雇用が大きな課題となるでしょう。
優秀なグローバル人材の獲得競争は、すでに始まっています。
特定技能を含めた外国人労働者の活用は、企業の成長戦略の一つとなるかも知れません。

【参考】

農林水産省「食品製造における労働力克服ビジョン」
農林水産省「特定技能・飲食料品製造業分野に関するQ&Aについて」
農林水産省「飲食料品製造業分野 特定技能1号技能測定試験について」
法務省「飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領

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