特定技能外国人の入国前の費用負担は、違反?知っておきたい法的リスクとその扱い
特定技能制度では、外国人本人が費用負担に同意していたとしても、それが適法とは限りません。
なぜなら、この制度は「外国人労働者の人権保護」と「強制労働や失踪の未然防止」を目的としており、本人の合意よりも法令や制度の規定が優先されるようになっているからです。
つまり、たとえ契約書に外国人本人の署名があっても、保証金・違約金・支援費用の天引きなど、法律やMOCで禁じられた項目を負担させれば、企業側が制度違反と判断される可能性が高くなります。
特定技能外国人の入国前費用負担 | 違反となる主なケース一覧
| 費用項目 | 違反理由 |
|---|---|
| 保証金・違約金 | 自由な退職を妨げるため禁止 |
| 渡航費の貸付を①退職したら一括返済、または②数年働いたら返済免除とする場合、③貸付金の給与天引きを労使協定締結せずに行う場合 | 借金による拘束につながる |
| 支援計画に関わる費用 | 企業側が全額負担する義務がある |
| 斡旋・紹介手数料(本人負担) | 求職者からの徴収は禁止 |
| 試験・健診費の実費超過 | 実費を超えた負担は不当と判断 |
この記事では、特定技能外国人の入国前の費用負担に関する違反ケースと、注意すべきポイントをご紹介します。
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特定技能外国人の入国前の費用負担は「内容次第で違反」になる?
特定技能外国人の受け入れにおいて、「入国前にかかる費用」の取り扱いを誤ると、知らないうちに制度違反とみなされるケースがあります。
多くの企業や支援機関は制度を遵守していますが、仮に保証金の徴収などを行えば、それは職業安定法や出入国管理法に抵触する可能性があり、受入れ資格の剥奪につながる恐れも否定できません。
実際に、以下のような費用の扱いは、法律上「違反リスクが高い領域」とされており、注意が必要です。
法律違反と見なされる可能性がある費用の扱い
| 項目 | 内容 | 違反と見なされる理由 |
|---|---|---|
| 保証金・違約金の徴収 | 退職防止目的で金銭を預けさせたり、途中退職に違約金を課す契約 | 明確に禁止されており、制度違反と判断される(保証金契約は無効) |
| 渡航費用の立替や貸付け(条件付き返済免除等) | ①退職したら一括返済、②数年働いたら返済免除とする場合、③貸付金の給与天引きを労使協定締結せずに行う場合 | 実質的に保証金と同様とみなされ、法的にNG(職安法・入管法) |
| 支援計画費の外国人転嫁 | 空港送迎・生活オリエンテーション等の義務的支援費を本人負担にする | 運用要領で企業側負担と明示、間接的請求も違反となる可能性あり |
| 過剰な斡旋料・紹介手数料の請求 | 仲介業者が外国人に対して手数料を徴収し、企業が黙認する | 手数料徴収は原則禁止。企業が関与すれば共犯と見なされる恐れ |
| 試験費用・健康診断料の実費超過請求 | 技能試験や健診に対して、実費を超える金額を請求 | 不当に高額な料金とみなされ制度上の重大な問題とされる |
このように、仮に保証金を徴収する契約を組んでしまえば、それだけで特定技能制度に適合しない組織と判断される恐れがあります。
日本政府はすでに、「どこまでを企業側が負担すべきか」「どの費用が外国人本人の自由意思による自己負担として認められるか」という明確な線引きを、ガイドライン・運用要領・MOC(政府間取決め)などの形で次のように定めています。
このルールに反すれば、以下のような実害が発生しかねません。
- 所属機関としての認定取消
- 行政指導・改善命令
- 企業名の公表・採用活動の信用失墜
- 海外送出国との提携停止
企業や仲介業者としては、「費用負担のルール」を契約前の段階でしっかり整理し、相手にとっても納得性の高い形で明文化しておくことが不可欠です。
制度違反は、意図せずとも発生します。だからこそ、「知らなかった」では済まされない――この認識を持つことが、すべての受け入れ企業に求められています。
(1) 渡航費を「貸付け」にすると違反になるケース
特定技能外国人の渡航費(航空券代)の貸付の際に「途中退職時は一括返済」や「○年勤務で免除」といった外国人本人(求職者)に対する条件を付けると、退職を思いとどまらせる効果を持つため、実質的な違約金とみなされ、入管法・職業安定法に抵触するリスクが高まります。また、貸付金の給与天引きを行う場合は、賃金控除の労使協定の締結をする必要があります。
入国時の渡航費は、「企業全額負担」または「十分な説明と本人の自由意思に基づく一部自己負担」という形で整理することが求められます。
(2) 仲介手数料を本人が払うと違反
特定技能の前身である技能実習制度などでは、現地のブローカーや送出機関が、外国人本人から法外な斡旋料や紹介料を徴収するケースが過去には頻発しており、深刻な社会問題とされていました。
特定技能制度では、こうした問題を繰り返さないために、職業紹介手数料の本人負担は禁止されており、費用の支払者は受入れ企業側に限定されています。
つまり、求職者である外国人に負担させることは、職業安定法および日本と相手国との二国間取決め(MOC)で明確に禁止されているのです。
仮に企業が、送出機関による不当な費用徴収や保証金の徴収が行われている事実を把握しながら、それを是正せずに契約や受入れを進めていた場合、「悪質なブローカーの介在を企業が黙認した」と判断され、受入れ機関としての基準不適合(欠格事由)に該当する可能性があります。
その場合は結果として、「共犯的立場」とみなされ、認定取消や5年間の受入れ停止処分に発展するリスクがあります。
また、二国間協定(MOC)に基づく政府間の情報共有により、国際的な信用問題へと発展することもあるため、企業側は費用の内訳や支払先の透明化を徹底し、不透明な金銭授受を許さない体制整備が求められます。
(3) 名目を変えた保証金も即違反
外国人本人やその親族に対する保証金や違約金の徴収は、特定技能制度において最も悪質かつ重い違反とされる行為のひとつです。
名目のいかんを問わず、「途中退職で罰金を科す」「親族名義で金銭を預かる」など、あらゆる形式の金銭その他の財産の移転を予定する契約(保証金・違約金契約)が禁止対象であり、契約書に記載するだけで制度違反となる可能性もあります。
また、特定技能外国人の退職を防ぐ目的の金銭的拘束は、本人の自由な選択を妨げるため、人権保護の観点からも厳格に規制されています。
企業が保証金の徴収が行われている事実を知りながら雇用契約を締結するなどして関与すれば、欠格事由に該当し、最大5年間の受入停止処分が下されることもあります。
(4) 入国前研修費を請求すると違反に
生活オリエンテーションや入国前ガイダンスなどは、「1号特定技能外国人支援計画」の一環であり、その費用はすべて法務省・出入国在留管理庁が定める運用要領において、受入れ機関側が負担すべきものと明示されています。
これを外国人本人の「研修費」や「事務手数料」などに名目を変えて給与から天引きする行為は、特定技能基準省令で「支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させてはならない」と明確に定められているため、間接負担としてもNGです。
また、登録支援機関がこれを外国人本人に請求した場合、支援業務の不適正として登録取消し(登録拒否事由)の対象となります。
そのため企業は登録支援機関の委託先選定においても、法令遵守体制を十分に確認する必要があります。
(5) 実費以上の試験費用請求は危険
技能試験や日本語試験、健康診断費用については、外国人本人の負担も認められていますが、その範囲は「実費相当額または適正な額」に限られています。
これは特定技能基準省令および運用要領で明確に定められており、受入れ機関や仲介業者がこれらの費用を通じて利益を得ることは禁止されています。
しかし、実費に対し「申込代行手数料」や「管理費」などの名目で、企業側の人件費や本来負担すべき支援業務のコストを上乗せして請求する行為は、不当に高額な徴収と見なされる恐れがあります。
こうした請求は、実質的に「支援に要する費用を外国人に間接的に負担させた」と判断される場合があり、特定技能制度の運用基準違反として処分対象となる可能性があります。
さらに二国間取決め(MOC)でも禁止されている「不当な徴収」に該当する恐れがあります。
特に問題となるのは、斡旋手数料や試験費用などを不明瞭な形で「一括請求」し、内訳を明示しないまま高額な金額を提示するケースです。
結果として、受入れ機関は「欠格事由」に該当し、最長5年間にわたって特定技能外国人の受入れが禁止される可能性があるほか、登録支援機関も「登録取消し」の対象となり得る場合もあります。
特定技能生本人の同意があっても入国前の費用負担はNG!
特定技能制度では、「本人が同意してサインしていれば、どんな費用も負担させてよい」という理屈は通用しません。
これは保証金や違約金、支援費用の転嫁などが入管法や基準省令によって明確に禁止されており、たとえ契約書に記載があっても無効とされるからです。
同意があっても入国前の費用負担がNGになる理由
| 費用項目 | 同意があってもNGとされる理由 | 法的根拠・関連規定 |
|---|---|---|
| 支援計画の実施費用(事前ガイダンス、空港送迎、生活オリエンテーション等) | 法的義務の転嫁は禁止されているため。支援の実施は受入れ機関(企業)の義務であり、費用を外国人本人に負担させることは、本人の同意があっても制度上認められない。直接・間接を問わず違反となる。 | ・特定技能基準省令「支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと」 ・入管法(登録拒否・取消事由) |
| 保証金・違約金(退職防止・失踪防止名目の金銭) | 身柄拘束・強制労働につながるため。退職の自由を制限する金銭的拘束は、人権侵害のおそれがあるとして名目を問わず禁止。本人が同意していても契約自体が無効となる。 | ・上陸基準省令「保証金の徴収等をされていないこと」 ・特定技能基準省令「違約金を定める契約を締結していないこと」 ・二国間取決め(MOC) |
| 渡航費用の貸付け(条件付き返済免除等) | 借金による拘束を防ぐため。「途中退職時は返済」「数年働いたら返済免除」の条件は、実質的な違約金とみなされ、退職の自由を侵害する。本人同意があっても不正と判断される。また貸付金の給与天引きを労使協定の締結なしで行うことも不正と判断される。 | ・職業安定法関係指針「求職者に対する渡航費等の貸付けの禁止」 ・特定技能基準省令 |
| 職業紹介手数料(求職者本人からの徴収) | 求職者負担が原則禁止されているため。職業紹介に係る費用は求人者(企業)が負担すべきものであり、本人が同意して支払っても違法となる。 | ・職業安定法「求職者からの手数料徴収の禁止」 ・二国間取決め(MOC) |
| 試験費用・健康診断費用の実費超過分 | 不当な費用徴収とみなされるため。本人負担が認められるのは「実費相当額」に限られ、利益上乗せや支援費用の転嫁は同意があってもNG。 | ・特定技能基準省令「実費相当額その他の適正な額」 ・運用要領 |
上記の表のように、外国人は立場上、不利な条件でも拒否しにくい構造的弱者であるため、行政は形式的な契約書や同意書の有無ではなく、その費用負担の実態を重視して審査を行います。
強制労働や失踪リスクを防ぐ観点からも、本人の形式的合意より法令の遵守と費用の適正性が優先される制度設計となっているため、企業側は「本人が納得しているから」という論理で不当な費用を特定技能生に負担させることがないよう、常に制度趣旨に沿った対応を徹底する責任があるのです。
企業側が知っておくべき実質強制という考え方
特定技能制度における「実質強制」とは、労働者を物理的に拘束するのではなく、渡航費の貸付けや違約金契約、保証金の徴収といった金銭的手段により、退職や帰国の自由を奪う仕組みを指します。
行政はこのような「借金型スキーム」や「ペナルティ付き契約」を、たとえ本人が合意していても不当な拘束(Debt Bondage)とみなし、厳しく規制しています。
「途中退職で費用を一括返済」などの条件は、実質的な強制労働につながる恐れがあり、入管法・職業安定法・基準省令などで明確に禁止されています。
受入れ企業がこれらの構造に関与し、外国人の自由な意思決定を妨げた場合は、「欠格事由」として最長5年間の受入れ停止など、重大な行政処分の対象になります。
「知らなかった!」では済まされない特定技能生の入国前の費用負担のまとめ
特定技能制度では、「入国前の費用負担」について本人が同意しているからOK、という理屈は通用しません。
どんな形であれ、保証金・違約金・渡航費の貸付け・支援費の転嫁などの費用を外国人本人に負担させることは、名目を変えてもすべてNGとされます。
これは本人の合意が法的正当性を担保するものではない制度設計になっているからです。
仮に特定技能生の名前で契約書にサインがあったとしても、行政から制度違反と判断される可能性が高く、判断が難しい場合は、外国人雇用の制度に精通した専門家や支援機関に相談するのが、最も確実で安全な対策となります。
仮に担当者の自己判断や古い情報だけを頼りに運用してしまった場合、認定取り消し・最長5年間の受入れ停止・行政指導・国際的信用の失墜など、企業側にも重大なリスクが及びます。
だからこそ「知らなかった」では済まされない――この現実を正しく理解し、制度の趣旨に即した適正な運用と、頼れる専門支援の活用を徹底することが、何よりも重要です。
制度を熟知したプロの支援で“想定外”を防ぐ
特定技能制度は、関係法令や行政の運用ルールが複雑なうえ、各国とのMOC(覚書)やその実務運用まで把握するのは非常に困難です。
企業だけで制度全体を理解し、法的リスクを回避しつつ、海外の送出機関とも適切に連携して不正リスクを防ぐのは、現実的には難しいと言えるでしょう。
そんなときに頼れるのが、特定技能制度の実務、国際交渉、現地事情に精通した支援のプロである「ミャンマー・ユニティ」です。
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