特定技能「製造業(製造3分野)」|外国人を製造業で雇用するには?

「特定技能1号」での雇用制度により、製造業においても単純労働を含むさまざまな付随業務に従事する外国人の雇用が可能になりました。この記事では製造業で外国人を受け入れる方法とポイントについて説明しています。

特定技能「製造業(製造3分野)」|外国人を製造業で雇用するには?

1.特定技能制度とは

特定技能制度とは、2019年より始まった、労働人口が不足している職種において、即戦力となる外国人を受け入れる制度です。
これまでは専門的に知識のある外国籍労働者の受け入れを積極的に行なっていましたが、国内の人口減少が進む中で、人手不足が悪化し、専門知識を必要としない製造分野においても技能試験に合格した外国人の受け入れが可能となりました。
特定技能制度によって、これから約34万人の外国人の受け入れが見込まれ、労働人口不足の緩和を目指しています。

      

2.製造業について

特定技能制度を利用した外国人技能者の雇用は、製造業では以下の3つの分野が認められています。

  • 素形材産業
  • 産業機械製造業
  • 電気・電子情報関連産業

参考:経済産業省「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」

原材料・部品の調達・搬送作業、各職種の前後工程作業、クレーン・フォークリフト等の運転作業などの、付随業務をすることも可能です。
ただし、「機械加工」以外の業務区分で受け入れた人材に対して、「機械加工」を付随業務として行うことは禁止されています。

                    

2-1 製造3分野とは

製造業は製造3分野とも呼ばれています。
上記で説明した素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業をまとめた呼び方が製造3分野です。

また2022年4月の閣議で製造3分野に関して変更点がありました。
特定技能1号は14分野でしたが、2022年4月の閣議により12分野へ変更することが決まりました。
日本は人手不足で特定技能分野に参入してほしいという業種が多い中、なぜ12分野へと受け入れ業種が減ったのかと考える方もいると思いますが、分野は減っていても実際の受け入れられる業種は変わりありません。

変更点としては、「素形材産業分野」、「産業機械製造業分野」、「電気・電子情報関連産業分野」が「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業(製造3分野)」として統合されたというわけです。

なぜ製造3分野に統合されたかというと、「産業機械製造業」での受け入れ人数が上限を超え4月から新規入国が止まってしまったためです。
新型コロナウイルス禍で半導体製造装置や産業用ロボットの需要が高まり、産業機械製造業の受け入れ人数は上限を超過してしまいました。素材や電気機器を対象とする業種には受け入れ人数に余裕があるため、製造3分野として受け入れ人数に余裕を持たせたというわけです。
実際に受け入れられる業種や職種には変わりがないので安心してください。

3.在留資格「特定技能1号」とは

「特定技能制度」を利用し取得できる在留資格には、「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。
製造業の3つの分野での外国人雇用においては、「特定技能1号」の在留資格が必要となります。
「特定技能1号」での在留は、5年間有効です。

4.「特定技能1号」の在留資格を取得するためには

外国人が「特定技能1号」の在留資格を取るためには、以下の2つの方法があります。

4-1特定技能評価試験に合格

「特定技能評価試験」に合格することで、「特定技能1号」の在留資格を取ることができます。
「特定技能評価試験」には両方の合格が必要となります。

  • 日本語試験
  • 技能試験

日本語試験の合格基準は、「日本語能力試験」でN4以上であること、または、「国際交流基金日本語基礎テスト」でA2以上であることです。
どちらか片方の合格で問題ありませんが、両方を受験することも可能です。

技能試験については、作業区分の「技能測定試験」に合格する必要があります。

<製造3分野(素形材産業 産業機械製造業 電気電子情報産業)の技能試験>
製造分野の技術試験は、日本のみで実施されています。(2020年1月にインドネシアで実施されましたが、その後は日本のみ。)
厳しい合格基準のため、これまでの合格率は15%を下回っています。
特定技能外国人の受け入れ人口の増員に伴って、これからさらに試験会場国の多様化と試験実施回数の増加が期待されます。

また、特定技能試験の受験は、短期滞在のビザでも受験可能なため、観光ビザで来日した際でも特定技能在留資格を取得できます。
新型コロナウイルスの影響で入国の制限がありますが、コロナが収束した際にはこの選択肢も有効になるでしょう。

4-2「技能実習」から「特定技能1号」への移行

国際貢献を目的とした「技能実習」を3年間修了した外国人は、同じ職種であれば「特定技能1号」へ在留資格を移行することができます。

5.「特定技能1号」外国人の採用ルート

「特定技能1号」の外国人を採用するルートとしては、以下の方法があります。

5-1留学生からの採用

留学生の在留資格から「特定技能1号」の在留資格に切り替えた外国人を雇用することが可能です。
留学生は国際貢献のための文化的な分野での雇用を望んでいる傾向がありますが、「特定技能1号」では日本に「5年」という在留期間の制限があるため、留学生は「特定技能1号」よりも永住権が取得できる「技術・人文知識・国際業務」での就労を望む人が多いため、「特定技能1号」の在留資格を取得する留学生は現状ではまだ少ない状況です。

また、留学生を擁する大学、専門学校、日本語学校が、留学生に対して未だに「技術・人文知識・国際業務」での就労のみを勧めていることも多く、これら教育機関の経営層や就職部、さらに教師が在留資格「特定技能1号」に関する知識と理解が不足しているのも、留学生の「特定技能1号」在留資格取得が低迷している原因となっています。
しかし現在は新型コロナウイルスの影響で国内の就職難が問題としてあるため、留学生の「特定技能1号」在留資格を取得も増える可能性があります。
留学生の受け入れをしている学校と連絡をとり求人票を送付したり、学校や留学生と直接契約している人材サービス会社に依頼したりすることで採用につながります。

5-2技能実習からの採用

前項でも記載したように、「技能実習」を3年間修了した外国人は、同職種であれば「特定技能1号」へ在留資格の移行ができます。
現在、製造業で雇用されている特定技能外国人はこのパターンがほとんどです。
2020年6月末に、1366人の外国人が製造業の「特定技能1号」を取得していますが、その全員が「技能実習2号」を修了した実習生です。
技能実習生時に働いていた企業の中で在留資格を移行することが多いですが、帰国した技能実習生を雇用することも可能です。
以前日本で技能実習2号を修了し帰国した外国人を採用する場合は、監理団体やその国ごとの送り出し機関と連絡をとり「特定技能1号」への移行の提案ができます。また、国内の人材サービス会社を通じて、製造業で雇用されていた技能実習2号修了者を探す方法があります。

5-3海外からの採用

最後に、海外にいる「特定技能評価試験」に合格した外国人の採用です。
これから海外での技能試験の開催が増えれば、採用もコンスタントに行えることが期待できます。
採用方法としては、海外との結びつきが強い人材サービス会社を利用することで採用がスムーズ進みます。

6.雇用する企業が押さえておくこと

6-1協議会への加盟

特定技能外国人を受け入れる企業は、産業分野ごとに設置された「協議・連絡会」への加盟が必須となります。

<製造3分野(素形材産業 産業機械製造業 電気電子情報産業)の協議・連絡会>
経済産業省が、特定技能外国人制度を適切に運用していくために必要となるもので、
製造業の3分野では、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」が設置されています。

6-2雇用形態と報酬

特定技能の外国人を製造業で雇用する際は、派遣会社を通さずに、直接外国人を雇用することが原則とされています。
フルタイム勤務が義務付けられており、報酬は日本人と同等か、それ以上であることが定められています。

6-3早期転職のリスク

製造業の分野に関わらず、特定技能外国人は常にいい条件の企業を探しているため、早期転職のリスクがあります。
そのため、企業の重要な情報や技術に関して、その他の情報の開示に関しては気をつけおく必要があります。
早期転職のリスクに関しては、特定技能外国人の雇用支援をしている人材サービス会社に相談することをおすすめします。
人材サービス会社は長年外国人と接してきたノウハウがあるため、適切に対応してくれることが期待できます。
また、各言語でのわかりやすいマニュアル制作など、雇用してすぐに働きやすい環境を整えることも早期退職のリスク回避に役立ちます。

7.さいごに

これまでは、永住者・定住者・日本人の配偶者などしか単純労働に従事することはできませんでしたが、「特定技能1号」での雇用制度により、製造業においても単純労働を含むさまざまな付随業務に従事する外国人の雇用が可能になりました。
製造業においては、現状では技能実習生が技術を活かして特定技能外国人として就職することがほとんどですが、留学生や海外からの受け入れが増えていくことが考えられます。リスクをうまく回避しながら制度を利用することで、深刻な人手不足も解消に向かうでしょう。

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